外壁塗装の剥離作業とは?方法別の特徴と単価目安を解説
外壁塗装の剥離作業、その単価が妥当なのか分からず不安を感じていませんか?
「見積書にある“剥離費用”が高すぎる気がする」「剥離って本当に必要?ケレンだけじゃダメ?」と悩む方は少なくありません。
実際、外壁塗装における剥離作業は、下地処理の中でも特に施工品質と耐用年数に大きく影響する工程です。
施工を省いた場合、塗膜の早期劣化や密着不良が起こり、せっかくの塗料も本来の性能を発揮できず、数年で再施工が必要になるケースも見られます。
この記事では、「剥離単価の妥当性」「業者比較でのチェックポイント」「施工後の保証に関わる重要な違い」まで解説していきます。
「見積書のここを見ておけばよかった」と後悔しないためにも、今からじっくりチェックしてみてください。
外壁塗装における「剥離作業」とは?基礎知識や単価の目安について
剥離作業の定義と工程内容を解説
外壁塗装における「剥離作業」とは、既存の塗膜や汚れを取り除き、新たな塗料をしっかり密着させるための最初の工程です。下地調整とも呼ばれるこの作業は、外壁塗装の成功可否を左右する極めて重要なプロセスです。
特に、旧塗膜の劣化や浮きが進んでいる場合、そのまま塗り重ねると塗料が剥がれる、ひび割れが進行するなどの施工不良が発生します。そのため、住宅の長寿命化と見た目の美しさを維持するためにも、剥離作業は欠かせません。
剥離作業には複数の方法が存在し、主に「手作業によるケレン」「電動工具による機械ケレン」「化学的な剥離剤の使用」「高圧洗浄機による除去」があります。現場の状況や下地の素材に応じて最適な方法を選ぶ必要があり、業者の判断力と経験が求められます。
以下に代表的な剥離方法と特徴を整理します。
塗膜剥離の主な方法と特長
剥離方法 | 特徴 | 適用場面 | 単価目安(㎡) |
手工具ケレン | サンドペーパーやスクレーパーを使う | 小面積や細かい部分 | 800~1,200円 |
電動工具ケレン | グラインダーや電動サンダーで研磨 | 金属部や広範囲の旧塗膜除去 | 1,200~2,000円 |
剥離剤 | 化学反応で塗膜を溶解させる | 複雑な形状や厚塗りの塗膜 | 1,800~2,800円 |
高圧洗浄 | 150kgf/cm²以上の水圧で表面を洗い流す | 外壁全体の汚れ除去、軽度の劣化 | 300~600円 |
作業にかかる時間も、下地や旧塗膜の種類によって異なります。たとえば、築年数が20年を超えるモルタル外壁では、塗膜が多層に重なっており、剥離作業に2〜3日を要することも珍しくありません。一方、築10年前後の住宅であれば高圧洗浄だけで済むケースもあり、施工時間は半日程度に収まることが多いです。
また、剥離剤を使用する場合は臭気の発生や中和処理など、環境面への配慮が必要です。施工には養生の徹底と、適切な作業手順を守る専門知識が不可欠であり、費用にも反映されます。
読者が外壁塗装を依頼する際には、見積書に「剥離工程」や「ケレン作業」の記載があるかを必ず確認し、工程が省略されていないかを確認しましょう。剥離作業は表面に見えにくい工程ですが、最終的な塗装の耐久性・美観に直結する最重要ポイントの一つです。
剥離作業が必要な外壁とは?見極めのポイント
すべての外壁に剥離作業が必要とは限りません。しかし、以下のような劣化症状が現れている場合には、塗装前に必ず剥離を検討すべきです。剥離を怠ると、せっかくの外壁塗装が数年で剥がれたり、再塗装の頻度が増えることにつながります。
代表的な見極めポイントは以下の5つです。
1 塗膜の浮きや膨れ
表面がブクブクと膨れている、または塗膜が下地から浮いている場合、密着性が失われています。この状態で上塗りしてもすぐに剥がれが発生するため、完全な除去が必要です。
2 チョーキング現象
手で触れると白い粉がつく現象で、塗料の樹脂が劣化して粉状になっているサインです。塗膜の性能が失われており、下地からのやり直しが推奨されます。
3 クラック(ひび割れ)
ひび割れが発生している場合、そこから水分が浸入し、内部から劣化が進行している可能性があります。表面だけの補修では不十分で、旧塗膜の全面剥離と下地処理が求められます。
4 再塗装回数が多い
築20年以上の建物や過去に2回以上塗り重ねている外壁では、古い塗膜が層状に重なり合っているケースが多く、剥離しないと新しい塗料が密着しません。
5 塗膜にシワや縮みがある
乾燥不良や施工不良によって表面にシワが生じている場合、塗膜全体が不安定です。これを上から塗り重ねると、短期間で剥がれが起きるリスクが高くなります。
これらの劣化症状は、見た目では判断が難しいことも多く、業者による現地調査が欠かせません。無料診断を実施している業者に依頼することで、適切な施工方法と費用の目安が明確になります。
剥離作業の必要性は、単なる工程の1つではなく、建物を保護するうえでの防衛線ともいえる重要な判断項目です。
外壁塗装剥離の種類と特徴を徹底比較!
ケレン1種~4種までの特徴と職人技術の違い
外壁塗装における「ケレン作業」とは、下地の塗膜やサビ、汚れを物理的に削り落とす工程です。塗料の密着性を高め、仕上がりの耐久性に直結するため、専門性が問われる作業として知られています。このケレンには「1種〜4種」といった分類があり、作業の範囲や使用する道具、求められる技術のレベルが異なります。
まずはそれぞれのケレンの違いを明確に把握するため、以下に比較表を整理しました。
ケレン1種〜4種の違いと対応範囲
ケレン種別 | 作業内容 | 主な道具 | 適用部位例 |
1種 | ブラスト処理による完全除去 | サンドブラスト装置 | 鉄骨、重防食仕様の鉄部 |
2種 | 電動工具による塗膜・サビのほぼ完全除去 | ディスクサンダー、グラインダー | 鉄扉、屋根鉄部、金属階段 |
3種 | 軽度の除去とサビ・汚れの清掃 | ワイヤーブラシ、ペーパー類 | 軽度劣化の鉄部、手すり |
4種 | 手工具での簡易清掃 | ヘラ、たわし、スポンジなど | 屋内金属部、軽微な汚れ部位 |
このように、ケレンは種類ごとに対象となる部位や施工コストが大きく異なります。施工の精度が仕上がりの美観・耐久性に大きく関わるため、業者の説明を受けながら、自宅の状況に合ったケレン方法を選ぶことが非常に重要です。
剥離剤を使った方法とは?環境リスクと安全対策
剥離剤とは、化学的な反応を利用して旧塗膜を柔らかくし、スクレーパーなどで容易に除去できるようにする特殊な薬剤です。特に複雑な形状や手工具・電動工具が入りにくい場所、また厚塗りされた複数層の塗膜に対して有効です。
一般的に使用される剥離剤は、アルカリ系や有機溶剤系に分類されます。市販されているものとは異なり、建築現場で用いられるプロ用の剥離剤は非常に強力で、取り扱いを誤ると人体や環境へのリスクが生じます。
以下に、代表的な剥離剤の種類と特徴を整理しました。
剥離剤の種類と用途
種類 | 主成分 | 適用例 | 使用時の注意点 |
アルカリ系 | 水酸化ナトリウムなど | 水性塗料の剥離 | 中和処理が必要。金属腐食のリスクあり。 |
有機溶剤系 | メチレン・クロライド等 | 油性・強溶剤塗料の多層除去 | 換気必須。作業員の皮膚・呼吸器保護が必要。 |
バイオ系剥離剤 | 酵素など | 環境配慮型、軽度塗膜の除去 | 剥離力が弱め。厚塗りには不向き。 |
剥離剤を使用する際には、以下のような安全対策が必須です。
1 使用前に必ず製品ラベルやSDS(安全データシート)を確認する
2 ゴーグル、ゴム手袋、防毒マスクなどの保護具を着用する
3 養生シートを使い、周囲の飛散・付着を防止する
4 廃液や剥離残渣は法令に基づき適切に処理する
5 作業後は剥離面を十分に水洗いし、乾燥・中和を行う
高圧洗浄との違いは?併用するケースと判断基準
高圧洗浄は、剥離とは異なり、主に「外壁表面の汚れ・カビ・藻の除去」を目的とした水圧による洗浄作業です。150〜200kgf/cm²前後の圧力をかけて表面を洗い流すため、旧塗膜を完全に除去することはできません。
ここで混同されやすいのが、「高圧洗浄だけで剥離が済むのではないか?」という誤解です。実際には、高圧洗浄とケレン・剥離剤は用途が全く異なり、塗装工事では併用されるのが一般的です。
以下にそれぞれの目的と適用範囲を比較してみましょう。
高圧洗浄と剥離作業の比較
項目 | 高圧洗浄 | 剥離(ケレン・剥離剤含む) |
主目的 | 汚れ・カビ・藻の除去 | 旧塗膜の完全除去 |
適用タイミング | 塗装前処理の初期段階 | 高圧洗浄後、必要に応じて追加処理 |
コスト(目安) | 300~600円/㎡ | 800~3,000円/㎡(方法により異なる) |
機材 | 高圧洗浄機、水源 | 手工具、電動工具、剥離剤 |
処理対象 | 表面の汚れ・微細な付着物 | サビ、剥がれかけの塗膜、厚塗り層など |
安全性 | 比較的安全 | 化学剤使用時は環境・人体リスクに配慮が必要 |
剥離作業の有無が左右する外壁塗装の「仕上がり品質」と「耐用年数」
剥離を正しく行った外壁はどれだけ長持ちするのか
外壁塗装の耐久性を大きく左右する要因の一つが「下地処理」、とくに剥離作業の有無です。古い塗膜がしっかり除去されていない状態で新しい塗料を塗布すると、塗料の密着性が低下し、塗膜の浮きやはがれといった施工不良を引き起こす原因になります。これにより、塗装の寿命が短縮され、場合によっては5年も経たずに再塗装が必要になることもあります。
一方で、適切に剥離を行ったうえで塗装された外壁は、塗料の密着が格段に良くなり、長期的な保護機能を発揮します。たとえば、ウレタン塗料の場合でも10年近く、シリコン塗料であれば12年〜15年の耐用年数が見込めるケースが多く、フッ素系塗料では15年以上の耐久性も期待できます。これは、下地と塗膜の一体化がしっかりと図られているからです。
以下に、剥離作業の有無による塗装の耐用年数の目安を比較した表を示します。
使用塗料の種類 | 剥離なしの耐用年数 | 剥離ありの耐用年数 |
ウレタン塗料 | 約5~7年 | 約8~10年 |
シリコン塗料 | 約8~10年 | 約12~15年 |
フッ素塗料 | 約12~14年 | 約15~18年 |
また、塗装工事を行う上での下地処理の質は、見積もりに現れる単価だけでなく、施工の仕上がりにも直結します。たとえば、ケレン作業や高圧洗浄など、下地の剥離にかかる作業時間が十分に確保されていれば、塗膜の剥がれや劣化スピードを確実に抑えられます。
剥離を行った場合には、外壁表面に付着していた劣化塗膜やサビ、カビなどの汚れも除去されるため、塗料の性能が本来持つ遮熱性、防水性、防汚性を最大限に引き出すことが可能になります。これにより、雨風や紫外線に強い外壁に仕上がり、美観を長期間にわたって維持できます。
さらに、建物の素材によっても剥離の重要性は変わります。たとえば、モルタル外壁やALCパネルでは塗膜の密着性がとくに重要であり、剥離が不十分なまま塗装を行うと、施工後数年でクラック(ひび割れ)が発生するリスクが高くなります。こうしたトラブルを防ぐためにも、塗装前の剥離処理は欠かせない工程です。
適切な剥離処理を経た外壁は、単に「長持ちする」だけではありません。次回の塗り替え時にも、下地が整った状態を維持しやすくなるため、次回の施工費用が抑えられるケースもあります。つまり、初期の剥離コストをかけた分、トータルでのメンテナンスコストの低減にもつながるのです。
剥離の有無によって保証内容が変わる理由とは
外壁塗装の保証制度は、施工業者によって大きく異なりますが、多くの場合「正しい下地処理」が行われたことを前提としています。つまり、剥離作業を省略している場合、たとえ表面的にはきれいに見えても、塗膜の剥がれや浮きといったトラブルが発生した際に「保証対象外」とされる可能性があるのです。
この保証除外の根拠となるのは、下地処理不足による塗膜の密着不良が原因であると判断されるケースが多いためです。業者が提示する保証書や契約書の中には、「適切な下地処理を実施したこと」が明文化されていることも少なくありません。こうした文言があるにも関わらず剥離を省いた場合、保証の根拠が失われてしまいます。
以下は、保証期間と剥離作業の有無による違いを表した比較表です。
塗料の種類 | 剥離作業の有無 | 保証期間の例(年数) | 備考 |
シリコン系 | 剥離なし | 約3~5年 | 塗膜剥がれが起きやすく短縮 |
シリコン系 | 剥離あり | 約7~10年 | 施工業者によって差あり |
フッ素系 | 剥離なし | 約5~7年 | 高耐久でも下地処理次第 |
フッ素系 | 剥離あり | 約10~12年 | 長期保証を適用可能な場合も |
特に注意すべきは「工事後のアフター対応の範囲」です。仮に施工後に塗膜の浮きや剥がれが発生しても、業者側が「これは下地処理不足の影響です」と判断すれば、無償対応は受けられない場合があります。つまり、見積もり時点で剥離作業の内容が明記されているか、契約書に保証条件が記載されているかを確認することが非常に重要です。
また、剥離処理を含めた施工を行う業者は、一般的に施工単価がやや高めになる傾向があります。しかし、その分保証期間が長く、対応範囲が広いことが多いため、初期費用と保証内容のバランスをしっかり見極める必要があります。
優良業者の場合は、以下のような保証項目を明示していることが多くあります。
- 剥がれ・膨れの保証年数
- 色褪せに対する保証の有無
- 補修対象となる範囲と条件
- 保証対応の回数や内容
まとめ
外壁塗装における剥離作業の単価は、単なる「追加オプション費」ではなく、仕上がりの品質や耐用年数を左右する極めて重要な項目です。一般的に、剥離の単価の目安は1m²あたり1000円から2500円程度が相場であり、ケレンの種類(1種から4種)、使用塗料のグレード、作業範囲の面積によって大きく変動します。
特に注意すべきは、剥離作業を省略すると密着不良や早期の塗膜劣化を招き、5年未満で再施工が必要になるリスクがあることです。反対に、適切な剥離を実施した場合は10年から15年の耐用年数を実現するケースもあり、初期費用以上の価値を生み出します。
見積書の内訳では、「人工単価」「作業時間」「施工範囲」「処理方法」「使用工具」などの明細に注目し、業者ごとに提示内容を比較することが欠かせません。また、保証内容も確認が必要で、剥離を行っていない塗装は保証対象外とする業者も存在します。
「見積もりが高い=悪い業者」とは限らず、単価が高くても保証や耐久性を含めたトータルコストで見極めることが賢明です。安さに飛びつくと、後に数十万円単位の損失につながることもあるため、費用の妥当性は慎重に判断するべきでしょう。
この記事を通じて、剥離単価の相場観や見積書の見方、施工品質と保証内容の重要性を把握し、後悔のない外壁塗装の判断材料を得ていただけたなら幸いです。
よくある質問
Q. 剥離作業を省略した場合、どのくらいの期間で塗膜が劣化しますか?
A. 剥離作業を省略した場合、塗膜の密着性が著しく低下し、施工から3〜5年以内に剥がれや浮きが発生するケースが多く報告されています。一方、下地の汚れや旧塗膜をしっかり除去した上での外壁塗装は、10年以上の耐用年数を確保することができます。劣化の原因には、ケレン不足や高圧洗浄の不徹底、塗料との相性ミスなどもあるため、作業工程の確認と業者の技術力が重要になります。
Q. 剥離剤を使った外壁塗装は安全ですか?近隣への影響はありますか?
A. 剥離剤を使った施工は効果的な反面、強い化学薬品を使用するため安全対策が不可欠です。作業中は適切な養生と臭気対策、廃液の処理が求められ、飛散や皮膚接触などのリスクもあります。特に住宅密集地やマンションでは近隣への臭気や養生不備による苦情が発生しやすいため、剥離剤の使用有無と作業管理体制を業者に確認することが大切です。環境配慮型の低臭剥離剤を使う業者も増えており、事前相談でトラブルを回避できます。
Q. 見積もりに「ケレン4種」「高圧洗浄」「剥離剤」と書かれているけど、どれが必要なの?
A. これらはすべて剥離の手段ですが、建物の状況に応じて最適な方法が変わります。ケレン4種はブラシやサンドペーパーでの簡易な清掃で、軽度な汚れやサビ処理に向いています。高圧洗浄は付着したチョーキングや塗膜の浮きに対応し、剥離剤は旧塗膜の全面除去が必要な場合に用います。築年数や外壁素材、下地の劣化度により工程が複数組み合わされることもあるため、施工前には業者と十分に相談し、見積書の記載内容が自宅の状態に合っているか精査することが重要です。
会社概要
会社名・・・東進ホーム株式会社
所在地・・・〒277-0054 千葉県柏市南増尾8丁目1−57
電話番号・・・04-7197-1580